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講義名 23秋 前期/国際税務マネジメント
基準単位数 1
科目区分 グローバル・ビジネス(応用)
必修・選択 選択
配当年次 1・2年次
学習期間 学習期間1/2学期

担当教員
氏名
◎ 梅田 浩二

オフィスアワー eラーニングサイトおよびメールでの質問を受け付けています。
(メールアドレスは大学院グループウェアのアドレス帳でご確認ください)
授業の概要 本授業の前半では、OECDモデル租税条約を題材に国際課税ルールの基礎知識を学習します。また、近年のグーグル、アマゾン等によるアグレッシブ・タックスプランニングと称される課税回避行動を分析するとともに、G20とOECD租税委員会によるBEPS行動計画を通じた国際課税ルール強化の動きをレビューします。後半では、グローバル企業が遵守すべき国際租税法の一つである移転価格税制と日本固有の制度である海外寄付金課税について学習します。そして、本国親会社による当該税制への過剰適応は、海外子会社側の課税リスクを高めるだけではなく子会社の業績も悪化させモチベーション低下を誘発するという経営管理上のリスクもあるため、制度対応と経営管理の両立について検討します。
なお、国際租税法を学習するために、法人税や企業会計に関する詳細な知識は必要ありません。経理業務に従事する方のみならず営業、調達、事業企画、経営管理等に携わる方々にとって有用な知識ですので、広く受講いただければと思います。
学習目標 学習目標の第一は、国際課税ルールの基礎知識を習得し、所属企業あるいは事例企業の課税リスクを評価できるようになることです。第二は、グローバルな経営管理と国際税務コンプライアンスの両立を視野にいれた国際税務マネジメントの方法を提案できる力を養うことです。
授業計画 第1章:国際租税法の基礎
国際課税ルールの理論的根拠となっているのが「OECDモデル租税条約」です。第1章では、OECDモデル租税条約の中から「恒久的施設」等の主要概念について学習し、進出形態の違いに応じた課税原則、二重課税排除の仕組み等について学習します。

第2章:アグレッシブ・タックスプランニング(ATP)とBEPS行動計画 
近年のアマゾン等による極端な課税回避行動はATPと呼ばれ、G20及びOECD租税委員会がBEPS行動計画と呼ばれる対抗措置をとりました。第2章では、ATPの内容とBEPS行動計画を通じた国際課税ルール強化の動きについて学習します。
※BEPS:Base Erosion and Profit Shifting(税源浸食と利益移転)

第3章:BEPS Inclusive Frameworkによる新・国際課税ルール
BEPS Inclusive Frameworkとは、「BEPS包括的枠組み」と呼ばれるOECD加盟国及び非加盟国の合計139か国の税務の専門家が集まってデジタル経済課税の導入有無を検討する特別プロジェクトチームです。第3章では、まず第2章で学習したBEPS最終報告後の日本の税制改正と世界の動向について学習します。そのうえで、100年に一度の国際課税ルールの変更といわれているBEPS Inclusive Frameworkによる新・国際課税ルールについて学習します。 

第4章:移転価格税制① 基本三法
移転価格税制とは、企業が海外子会社との取引を独立第三者との取引価格(「独立企業間価格」という)と異なる価格で行った場合、独立企業間価格で取引したとみなして法人税を計算する制度です。第4章では、移転価格税制の中核概念である独立企業価格算定法に関し、基本三法と呼ばれる3つの算定法について学習します。一方で、企業グループの国境を越えた現実の取引価格を「国際移転価格」といいますが、この国際移転価格と独立企業間価格との乖離からどのように移転価格課税額が計算されるかを学習します。

第5章:移転価格税制② その他政令で定める方法
移転価格税制の独立企業間価格算定法には、基本三法のほかに「取引単位営業利益法」「利益分割法」「ディスカウント・キャッシュフロー法(DCF法)」からなる「その他政令で定める方法」があります。第5章では、近年、最もその利用度が高く、課税額が巨額化しやすいといわれる取引単位営業利益法の導入の背景、特徴を学習するとともに、利益分割法及びDCF法の適用条件、適用した場合の国外移転所得の計算方法等について学習します。

第6章:国際移転価格の管理
国際移転価格とは、企業グループ内において、個々の企業同士が行う取引の「実際の価格」です。第6章では、企業グループが取引する部品、完成品や企業ノウハウなどの無形資産等に関し、価格設定の方法について学習します。また、どのような無形資産が移転価格税制上、重要な無形資産となるのかについて学習します。そして、国外移転所得が発生した場合、二重課税を排除するために税制としてはどのような制度を設けているのか、一方で企業がとる移転価格課税への対策が海外子会社の業績やモチベーションにどのように影響する可能性があるのかについて学習します。

第7章:移転価格文書化・海外寄付金課税
移転価格文書とは、企業グループの事業概要、グループ内取引の状況、国際移転価格の設定方針、独立企業間算定法の選定方針、国外所得移転の発生状況等を企業が自主的に取りまとめ、税務調査時に課税当局に提示することを義務づけられた文書です。第7章では、移転価格文書を作成するために企業がアップデートすべき情報は何か、準備を怠った場合の課税リスク、文書化の経営管理上のメリット等について学習します。
また、海外寄附金課税は日本固有の制度ですが、移転価格税制と混同されやすい制度です。海外寄付金課税は移転価格税制とどこが異なるのか、寄附金認定を受けやすい国際移転価格政策や社内文書の特徴などを民法549条の贈与契約と関系づけながら学習します。
受講上の留意点 ・大学の既定のスケジュール通りに遅延なく受講してください。
・税制の詳細よりも、その時代背景、目的、基本構造など大きな視点でポイントを押さえてください。
成績評価基準 授業への出席率:40%、各章の確認テスト:20%、期末レポート:40%
必読書籍 必読図書は特にありませんが、以下の参考書籍を講義と並行して読まれると理解が深まります。
参考書籍 望月文夫.2022.「図解 国際税務 令和4年版」一般社団法人 大蔵税務協会.
山田晴美.2021.「チャレンジ移転価格税制」税務研究会出版局.
その他 特にありません。
対面授業
対面授業を実施します。受講申込の際は「対面授業スケジュール」にて日程をご確認ください。