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講義名 24春 後期/経営哲学
基準単位数 1
科目区分 企業倫理・経営思想(応用)
必修・選択 選択必修(経営人間学系)
配当年次 1・2年次
学修期間 学修期間1/2学期

担当教員
氏名
◎ 十名 直喜

オフィスアワー eラーニングサイトおよびメールでの質疑応答を受け付けています。
(メールアドレスは大学院グループウェアのアドレス帳でご確認ください)
授業の概要 日本企業にみる国際的プレゼンスの低下傾向は、顕著なものがあります。経営と技術の閉塞を打破するイノベーションでは後塵を拝し、品質不祥事や過労死なども後を絶ちません。メイド・イン・ジャパンは高品質・高信頼性ブランドとみなされ、日本企業の代名詞となってきました。それを根底から揺り動かしているのが、日本の大企業に相次ぐ品質不祥事であり、過労死やブラック企業などの労働不祥事です。

経営とは何か、品質とは何か、働くとは何かが、根底から問われています。経営とは、人間が目的に向かって協働して行う営みであり、目的達成の技術と理念の総体とみることができます。その経営概念を一番有効に使ったのが企業であり、その偏向と逸脱が種々の問題を引き起こしています。

日本的経営の根幹をなした品質と働き方の「好循環」とは何であったのか、なぜどのように「悪循環」に転じたのか。国際的劣位が目立つ「学び直しの意欲と活動」を反転させる方策は何か。技術と文化のイノベーションを促す経営・働き方とは何か。再生に向けて、日本資本主義の精神、経営・仕事の本質と原点に立ち返り、今日的な位置と意味を捉え直すことが求められています。

その重要な手がかりとなり、導きの糸となるのが、経営哲学です。経営哲学は、経営を「哲学」する、すなわち根源的に問い論理的に捉え直すことであり、そこで得られた仮説的命題の理論的体系です。
経営哲学は、限りなく深いものがありますが、その本義は、経営の意味やあり方を現実に立脚しつつ根底から探求することにあります。そのような視点からみると、経営哲学は、①経営者論、②経営(者)哲学、③経営理念の3層構造として捉えることができます。②経営(者)哲学は、①経営者論/③経営理念とも深く関わり、橋渡し的な役割も担っており、「狭義の経営哲学」とみることができます。一方、3層のダイナミックかつシステム的な関係に注目するのが「広義の経営哲学」です。

本講座は、(広義&狭義の)経営哲学の視点から、日本資本主義の原点に立ち返り、日本経営の本質と歴史をグローバルに捉え直します。さらに、品質と働き方、生き方の視点をふまえ、経営のあり方と未来を展望します。
学修目標 本講義の目標は、次の3点にあります。
1) 日本資本主義の原点から、経営と労働を問い直す。
2) 日本的経営の特徴・本質・課題を、技術と文化の両面から深く理解する。
3) 経営者、研究者の経営哲学から生き方、働き方を学び、自らの人生と働く意味を問い直し再設計する。日本資本主義の原点に立ち返り、経営哲学の視点から、経営と労働、さらには人生の意味を根底から問い直します。そして、本来的なあり方を考え抜く意欲と視点、ノウハウの獲得を図ります。
授業計画 第1章 経営哲学は今、なぜ求められているか ―仕事・人生哲学からの視座
・経営哲学への視座と手がかり、わが仕事・研究・人生哲学、日本資本主義と日本的経営の課題、品質と働き方へのシステム・アプローチ

第2章 経営哲学とは何か ―その枠組み・課題・あり方を探る
・経営と経営哲学の枠組、経営体と企業・経営・事業、哲学・経営・経営哲学とは何か、経営科学と経営哲学の意味とあり方、経営哲学の3層構造、授業のねらいと概要 

第3章 ドラッカーの経営哲学と経営思想にみる光と影 ―仕事・人生哲学の魅力をふまえて
・ドラッカーの仕事と人生、ドラッカー経営哲学の諸相、ドラッカーの経営学・経営哲学にみる光と影、ドラッカー理論の歴史的位置と21世紀課題     

第4章 稲盛和夫の人生・仕事・経営哲学
・稲盛和夫の人生・仕事マップ、京セラフィロソフィと人生・経営・仕事哲学、稲盛和夫の経営哲学とその普遍的意義、ドラッカー&稲盛和夫論、稲盛経営哲学と資本主義の課題

第5章 トヨタ生産システムと大野耐一の経営哲学
・大野耐一[1978]『トヨタ生産方式』の歴史的意義、フォード・システムとトヨタ生産システム、普遍化への豊田家4代の軌跡と大野耐一、「いま」を生かす、ジャスト・イン・タイムと情報社会、トヨタ経営哲学の課題

第6章 渋沢栄一の日本資本主義論と経営哲学                     
・日本資本主義の原型づくり、渋沢栄一/ドラッカー/サンシモン主義、企業設立と公益事業、渋沢栄一の処世と信条、『論語』と経営哲学、立志と学問、算盤と道徳、権利と義務、実業と士道、仕事の哲学、問われる公と私の概念 

第7章 ビジョナリー・カンパニーにみる経営哲学と経営理念
・卓越企業にみる利益と理念の同時追求、本質思考と独自性、経営理念と自己実現、自己実現と他者実現、ドラッカー/稲盛/トヨタ/渋沢にみる経営哲学と21世紀課題
受講上の留意点 大学の既定のスケジュール通りに遅延なく受講してください。
成績評価基準 ・出席率  20%
・各章課題 35%
・期末課題 45%
必読書籍 なし
参考書籍 本講義の参考文献は、たくさんあります。ここでは、主要な本に絞って紹介します。どれか1冊でも、お読みいただければ有り難く存じます。より興味深く受講していただけることでしょう。
・十名直喜『学びと生き方のリフォーム ―AI時代の人間・労働・経営』(仮題)社会評論社、2024年(6月予定)
・十名直喜『サステナビリティの経営哲学 ―渋沢栄一に学ぶ』社会評論社、2022年
・十名直喜『人生のロマンと挑戦―「働・学・研」協同の理念と生き方』社会評論社、2020年
・十名直喜『企業不祥事と日本的経営―品質と働き方のダイナミズム』晃洋書房、2019年
・十名直喜『現代産業論 ―ものづくりを活かす企業・社会・地域』水曜社、2017年
・経営哲学学会編『経営哲学の授業』PHP研究所、2012年
・経営哲学学会編『経営哲学とは何か』文真堂、2003年
・小笠原英司『経営哲学研究序説』文真堂、2004年
・P.ドラッカー『ドラッカー20世紀を生きて』日本経済新聞社、2005年
・三戸 公『ドラッカー、その思想』文真堂、2011年
・稲盛和夫『働き方』三笠書房、2009年
・伊藤幸男『稲盛経営哲学の拓く地平』静岡学術出版、2010年
・大野耐一『トヨタ生産方式』ダイヤモンド社、1978年
・渋沢栄一『論語と算盤』守屋淳訳、ちくま新書、2010年
・島田昌和『渋沢栄一 ―社会起業家の先駆者』岩波新書、2011年
・鹿島 茂『渋沢栄一 ―上 算盤篇』文芸文庫、2013年
・J.コリンズ/J.ポラス『ビジョナリーカンパニー』山崎洋一訳、日経BP出版センター、1995年
・宮田矢八郎『理念が独自性を生む』ダイヤモンド社、2004年
その他 各章および期末課題の作成に当たっては、eラーニングサイト上に「レポート・論文の作成要領」を掲載いたしますので、参考にしてください。評価のポイントになります。基本となる文章作法を体得することは大切なことです。人生と仕事における良い習慣を身につけることにもなります。
対面授業
対面授業を実施します。受講申込の際は「対面授業スケジュール」にて日程をご確認ください。