シラバス参照

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講義名 25秋 後期/ブロックチェーン技術の社会実装(応用編) ※変更の可能性があります
基準単位数 1
科目区分 経営数理・問題解決(応用)
必修・選択 選択
配当年次 1・2年次
学修期間 学修期間1/2学期

担当教員
氏名
◎ 藤本 守

オフィスアワー eラーニングサイトおよびメールでの質疑応答を受け付けています。
(メールアドレスは大学院グループウェアのアドレス帳でご確認ください)
ミーティング等を希望する場合は、事前に希望日時をご連絡ください。
授業の概要 ブロックチェーン技術は金融サービス領域のみならず、産業分野においても大きな変化をもたらす可能性を持った技術です。これまでは暗号資産への応用が最も進展し社会的にも認知されていますが、それ以外の様々な分野への応用が進んでいます。
ブロックチェーンブームに乗って多くのプロジェクトが生まれた一方で、社会実装の手前で足踏みをしている事例、社会実装まで進んだものの継続出来なかった事例も多く見られます。それは暗号資産の分野においても同様です。
ブロックチェーン技術の社会実装は未成熟で発展途上であり、これが正解というセオリーがあるわけではありません。本講義ではブロックチェーン技術の社会実装はどのように進められるものなのか、事例を用いながら解説します。
なお、本講義ではブロックチェーン技術に対する知識は必須ではありませんが、専門用語等が出て来ますので「ブロックチェーン技術の社会実装(基礎編)」を受講されていることが望ましいです。
学修目標 本講義では、ブロックチェーン技術の社会実装を進めるにあたり、ユースケースがブロックチェーンに適しているかに始まり、新たな技術を用いるメリットとリスク、スケーリングに関する要件、システムレイヤーの選択等、考慮が必要となる事項を事例を通じて通じて理解することにより、ブロックチェーン技術をビジネス応用する場合に多面的な考え方できるようになることを目指します。
更に、ブロックチェーン技術を利用した新たなビジネスの企画もしくは現行業務への適用等に関与する場合に、その進め方について提案が出来るようになる事を目指します。
授業計画(各章)
第1回
タイトル
ブロックチェーン技術の特徴(振り返り)とビジネス応用の概観
内容
ブロックチェーン技術の社会実装にあたっては、その技術的な特性を理解した上で利用することが必要です。
本講義の冒頭では「ブロックチェーン技術の社会実装(基礎編)」を引用して、ブロックチェーン技術の基本的な特性を振り返ります。その中で、一言でブロックチェーン技術と言っても様々なバリエーションが存在することを思い出して下さい。
それを理解した上で、本講義のテーマであるブロックチェーン技術のビジネス応用について、次章からどのような切り口で事例を解説して行くのかを説明します。
第2回
タイトル
デジタル通貨への応用
内容
ブロックチェーン技術(というよりもBitcoin)は中央集権的な組織が無くても支払いが可能となる手段として誕生し、それから10年以上を経て大きな暗号資産市場が形成されるまでになりました。ブロックチェーン技術の社会実装を学ぶ上で金融分野は最初に取り組みべき領域です。
当初は仮想通貨と言われていましたが、最近ではデジタル資産という言葉が広く使われるようになり、法制度上の解釈整備も進んでいますが、必ずしも世界共通の枠組みが整っているわけではありません。
そのような状況において、まずは「デジタル通貨」を社会実装する様々な取り組みについて解説します。
第3回
タイトル
デジタル資産への応用
内容
金融業界におけるブロックチェーン技術の社会実装が比較的早い段階から始まったのは貿易金融分野です。これは貿易金融の商慣習が「紙」を前提としており、時間・コストともに非効率であると多くの関係者が認識していたためです。多くのプロジェクトが立ち上がりましたが、グローバルに定着するまでには至っていません。これだけ多くの関係者からの期待を集めているプロジェクトが何故想定通り進まないのかを解説します。
次に最近多くの注目を浴びているビジネス応用がRWA(Real World Asset)のトークン化です。RWAと言っても有価証券のトークン化、不動産のトークン化に始まり、様々なものをトークン化する動きが広がっています。その中には金融分野ではないものも含まれます。発展過程にあるブロックチェーン技術のRWAへの応用についての現在地を解説します。
第4回
タイトル
サプライチェーン分野への応用
内容
ブロックチェーン技術の社会実装で金融業界に次いで大きいのはサプライチェーン分野への応用です。流通するモノ・サービスの真正性を証明することを主な目的としたもの、物流・商流管理(含、発注・納品・請求・入金業務)の効率化を目的としたもの、商流データ(受発注データ、納品・請求データ等)を裏付けとしたファイナンスを目的としたもの、最近ではCO2排出量算定(主にScope3の情報連携)を目的としたものなど様々なユースケースが生まれています。
これはブロックチェーン技術の特徴である改竄耐性(直接知らない者同士であっても記録されたデータを信用することが出来る)や情報の一貫性(あなたが見ている情報は私が見ている情報と同じ)に依存したものですが、それがどのように実現されているのか事例を見ながら解説します。
第5回
タイトル
デジタルアイデンティティへの応用
内容
前章のサプライチェーン分野にも関係しますが、情報の発信者が本物であること、情報の受領者も本物であることは、デジタル空間で情報を授受する場合には当然の前提と考えられていますが、残念ながらデジタル完結で本物であることを証明する手段が(少なくとも日本では)まだ確立出来ていません。
既存のPKI基盤(特に公的な証明があるPKI基盤)を利用した本人の真正証明の仕組みと、ブロックチェーンおよびその派生技術を連携した本人の資格証明もしくは属性証明の仕組み(これらを総称してデジタルアイデンティティを呼びます)の取り組みがグローバルで進みつつあります。将来の社会インフラとなることが期待される取り組みについて解説します。
第6回
タイトル
行政や公共サービス分野への応用
内容
公共機関(政府・自治体)および公共インフラ(交通、電気、医療・福祉等)においても、データのプライバシーを確保した上で情報の伝達および集約を行うことを目的にブロックチェーン技術を応用する実証が進められています。
公共的な領域という一見すると中央集権型の分野において分散台帳技術をどのように活かそうとしているのか、それを実現するための課題が何かを解説します。

(※本章の内容については、講義内容具体化の状況によって差し替える可能性があります。)
第7回
タイトル
ブロックチェーン技術の社会実装に向けた討議(Web3の実現を1つのテーマとして)
内容
これまでに様々なビジネス領域における様々な事例を取り上げ、ブロックチェーン技術の社会実装がどのように進められているかを解説しました。
それらを踏まえ、さらに今後の技術トレンドや規制環境の変化も念頭に、日本政府が推進するWeb3(経産省はWeb3.0と呼んでいる)はどのように進んで行くのか、社会実装(定着化)に向けた課題はどこにあるのか、まだ未知数ではあるがSociety5.0(サイバー・フィジカル融合社会)の基盤になり得るのかをテーマとして、討議を行います。
なお、第1章から第6章に対するアンケート(質問や疑問点)に対する解説と質疑も合わせて行います。
受講上の留意点 大学の既定のスケジュール通りに遅延なく受講してください。
成績評価基準 ・出席率 :20%
・小テスト :30%
・期末課題 :50%
必読書籍 本講義の内容とは直接関係しませんが、ブロックチェーン技術の社会実装を考えるうえで示唆を得られる書籍です。
・クリス・ディクソン「Read Write Own」(日経BP)2024年
・松尾真一郎他「Web3の未解決問題」(日経BP)2024年
参考書籍 「ブロックチェーン技術の社会実装(基礎編)」であげた参考書籍を再掲します。
ブロックチェーンの入門書
・Daniel Drescher「徹底理解ブロックチェーン」(インプレス)2018年
・杉井靖典「いちばんやさしいブロックチェーンの教本」(インプレス)2018年
ブロックチェーン技術の解説書(専門用語についてはこちらがお勧め)
・山崎重一郎他「ブロックチェーン技術概論 理論と実践」(講談社)2022年
・赤羽喜治他「ブロックチェーン仕組みと理論(増補改訂版)」(リックテレコム)2019年
その他 本講義はブロックチェーン技術を理解することを目的としたものではないためコンピュータサイエンス等の専門知識は必要ありません。但し、ブロックチェーン技術をビジネスに応用するためには参考書籍に上げた「ブロックチェーンの入門書」に書かれている程度の技術的な理解は必要です。第1章において簡単に「ブロックチェーン技術の社会実装(基礎編)」のおさらいをしますが、専門用語の解説は行わないませんので、「基礎編」にあげた参考書籍を適宜参照するようにしてください。

※本シラバスは開講前に変更になる可能性があります。ご留意ください。
事前学修・発展学修 事前学修:
・本講義においてブロックチェーン技術の専門知識は必要としませんが、専門用語への理解が必要となるため「ブロックチェーン技術の社会実装(基礎編)」を受講されていることが望ましいです。講義中のブロックチェーン技術に関係する用語については「基礎編」の推奨書籍を適宜参照してください。
・各章の小テストでは、各章の講義内容に加えその背景も含めて理解して頂きたい点を出題しています。講義動画を視聴する前に小テストに目を通して頂くことをお勧めします。

発展学修:
・各章の講義資料の中に、情報を引用した文献・資料のリンク(もしくは文献・資料名)を掲載します。講義の説明だけでは説明しきれない内容があるため、内容理解を深めるためにそれらのリンク等を講義のあとに見て頂くことをお勧めします。
・ブロックチェーン技術のビジネス応用は未成熟で発展途上であることから、講義を視聴したタイミングによっては講義内容と現実が異なる状況になっている可能性があります。それを念頭に、講義に対する疑問点や問題点を各章ごとのアンケートに記載してください。どこに疑問を頂いたのか、何が問題だと考えるのか、について第7章の対面事業の中で解説・討議したいと思います。
・本講義はブロックチェーン技術のビジネス応用に向けたヒントをつかむことを目的としています。ビジネスは実際にやってみないとわからない(正解がない)分野であり、さらに1人1人の経験や置かれた環境によって異なるアプローチが考えられます。最終課題として皆さんにとっての社会実装を論じてもらいます。その準備として各章を振り返り、自分ならではアプローチを考えてみて下さい。
対面授業
対面授業を実施します。受講申込の際は「対面授業スケジュール」にて日程をご確認ください。