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講義名 24春 通期/オペレーションズ・マネジメント(小林)
基準単位数 2
科目区分 経営数理・問題解決(コア)
必修・選択 必修
配当年次 1・2年次
学習期間 学習期間1学期

担当教員
氏名
◎ 小林 英幸

オフィスアワー eラーニングサイトおよびメールでの質疑応答を受け付けています。
(メールアドレスは大学院グループウェアのアドレス帳でご確認ください)
授業の概要 オペレーションズ・マネジメント(OPM)は、定常業務(オペレーション)を機能別、部門別ではなく、それらを超えたつながりや連携の観点でマネジメントする手法であり、理論の体系です。歴史的には生産現場のオペレーションの管理に始まり、サプライチェーン・マネジメントやカスタマーリレーションシップ・マネジメントなどの領域で発展し、近年ではナレッジ・マネジメントの領域でも研究が進んできました。
OPMには、経営学的なアプローチと経営工学的なアプローチがあります。前者では、OPMを組織全体の戦略的目標と統合される重要な機能と見なし、仕組みや成功事例を体系化して論じます。その中で、組織の価値創造にどのように貢献するかが重要な議論になります。後者では、科学的な手法と技術を用いて組織の効率性と生産性を向上させることを志向します。そのために、個々の課題を検証して解決することを目指すというアプローチを採ります。
「オペレーションズ・マネジメント(小林)」は、主として経営工学的なアプローチで授業を進めます。企業活動とは、顧客にと って望ましい製品・サービスを創造し、それを顧客にとって望ましい価格で提供することによって利益を得る活動であると考えます。本授業では、上記を実現するための主要な業務及びその連鎖に注目し、それらのマネジメントの理論的背景やそれらが優良企業ではどのように行われているか、そこに至るまでにどのような変遷を経たかも交えて概観します。
学習目標 企業の経営を担う人材として備えておくべき、企業活動の様々な業務についての知識と、それぞれの業務及び業務連鎖を効果的にマネジメントするための手法を習得すること。またその結果として、実際の企業活動におけるオペレーション上の問題に直面したとき、解決策を検討し最適解を導き出す力を身に付けること。
授業計画 第8章と第14章は対面授業、そのほかはビデオによる授業となります。
第1章 オペレーションズ・マネジメントとは
まず導入としてオペレーションズ・マネジメント(以下、OPM)の定義を明らかにします。次いで企業活動のインプット・アウトプットを整理しながらOPMの全体像を確認します。また業務の連鎖の観点からバリューチェーンについて考察し、その全体に関わる環境マネジメントについても見ていきます。そして最後に、OPMを困難にする要素を、経営工学的なアプローチで読み解きます。

第2章 オペレーションズ・マネジメントの進化
この章ではOPMの進化について見ていきます。まずテイラーの科学的管理法に始まって、フォーディズム、統計的品質管理、ホーソン実験、オペレーションズ・リサーチなど、1950年代までのOPMの主な流れを理解します。次いでトヨタ生産方式やTQC/TQMのような日本モデルとその形式知化について概略を理解します。更に、ポスト日本モデルの試みと、OPMへのITの導入の歴史的な説明を確認します。

第3章 製品開発マネジメント1 概論
この章から各論に入ります。まずOPMの今日的な課題が知識創造のための組織能力の向上だという点に着目して、開発組織のOPMの話に入っていきます。開発期間の短いアパレルから最も長いと言われる創薬まで、製品開発の事例を参照しながら、企業活動における製品開発力の位置づけを考えます。また自動車の製品開発を例に、日米欧のプロセスや組織のあり方を比較しつつ考察します。

第4章 製品開発マネジメント2 日本モデル
製品開発における日本モデルの代表格であるトヨタ自動車を中心として、製品開発のマネジメントについて詳しく見て行きます。まずモノづくりの今日的意味が製造ではなく開発にあることを確認した上で、設計品質の確保や性能要件の達成方策について理解します。次にトヨタの製品開発を支える主査制度や「ラグビー方式」について理解した上で、ラグビー方式の課題についても考察します。

第5章 コスト・マネジメント1 概論
この章から2章にまたがって、「(製品・サービスを)顧客にとって望ましい価格で提供することによって利益を得る」という、企業活動の根幹に関わる話をします。まず概論として、コストにまつわる理論とコスト・マネジメントの手法を紹介しますが、会計の授業と重複する部分は簡単な説明に留めます。そして次章につながる考え方として、戦略的コスト・マネジメントについて説明します。

第6章 コスト・マネジメント2 原価企画
戦略的コスト・マネジメントの代表格としての原価企画について、トヨタの事例を基に説明します。原価企画の系譜に続いて、差額方式と絶対値方式などの考え方、原価企画の体制、委員会活動と三次元組織、目標設定や原価低減の手法などを解説します。また原価企画の逆機能として担当者の疲弊の問題を取り上げ、厳しい活動では担当者の心理に寄り添う必要があることも確認します。

第7章 マネジメント・コントロール・システム
経営戦略とOPMとをつなぐ仕組みがマネジメント・コントロール・システム(MCS)です。かつてサッカー日本代表の監督を務めたトルシエとジーコのマネジメントスタイルを例に引きながら、MCSについて解説します。サイモンズの「4つのコントロールレバー」、マーチャント他の「3つのコントロール」、及びオーウチの「クランコントロール」について説明した上で、MCSの実践例を幾つか挙げます。

第8章 [対面授業] 経営戦略・MCS・OPMの問題事例
経営戦略・MCS・OPMの3層が適切に機能すれば、組織が期待通りの成果を上げる可能性は高まります。逆に言えば、それらのいずれかがうまく機能しないと、何らかの問題が顕在化し易いと考えられます。第8章では、経営戦略・MCS・OPMのいずれか(あるいはいずれも)がうまく機能していないと思われる実例を題材に、何が起きていたか、どうするべきだったかを、公開情報に基づいて考察します。OPM・MCSについては第7章までの授業で得られた知識も使って分析し、経営戦略については自由に発想して考えてください。講師がテーマを複数用意し、各自がその中から選択したテーマについて事前に資料を作ります。対面授業では、グループ内で議論した上で、代表者が発表します。

第9章 品質マネジメント
経営工学の中で中心的な分野の一つである品質マネジメントについて、分布やばらつきなどの基本的な概念から説明していきます。その上で品質マネジメントのツールとして、QC七つ道具、シューハートの管理図、実験計画法、タグチメソッドなどの話をします。更に、源流管理やFMEAなど品質にまつわる開発部門の役割について確認し、品質が設計段階で8割方決まることを理解して頂きます。

第10章 生産マネジメント
OPMの起源でもある生産マネジメントはよく研究されて浸透してきました。まず生産性や財などの概念を理解した上で、生産システムの4つの段階や、線形計画法・生産スケジューリングの理論などについて学びます。次いで工程管理の計画機能と統制機能について理解します。更にテイラーの科学的管理法から始まる作業研究について、生産現場で実施される手法の幾つかを確認します。

第11章 サプライチェーン・マネジメント1 概論
2章にまたがって学ぶサプライチェーン・マネジメントの最初は在庫の話です。経済発注量、在庫コスト、安全在庫などの理論に続いて、「新聞売り子問題」やデカップリング在庫などの事例を学びます。次に小売りとメーカーやベンダーとの間でICTを使って情報を共有するシステムの幾つかの例を見ていきます。更に工場の立地やサプライヤの選択、配送計画などに関するモデリングについて考えます。

第12章 サプライチェーン・マネジメント2 トヨタ生産方式
この章では、サプライチェーン・マネジメントの源流とも言えるトヨタ生産方式について見ていきます。はじめにOPMの観点から見たアプローチで、「7つのムダ」「ジャストインタイム」「かんばん方式」「可動率」「自働化」「カイゼン」などのキーワードを理解します。続いて事例をもとに現場で起きていることを確認していきます。最後に、トヨタ生産方式をすんなり導入できた企業があまり多くない理由について考察します。

第13章 カスタマー・リレーションシップ・マネジメント
カスタマー・リレーションシップ・マネジメント(CRM)とは、「顧客を識別し、顧客満足度と企業収益を共に高める、選択と集中の仕組み」です。7つのCRM戦略や、顧客の識別、維持・育成の仕組みなどを理解した上で、顧客データの収集・分析・活用の手法を学びます。理解を助けるために、幾つかの企業の事例も紹介します。また、CRMにはICTの技術が欠かせないことも確認します。

第14章 [対面授業] オペレーションズ・マネジメントの優秀事例
2度目の対面授業では、受講生の皆さんが実際に経験したOPMの優秀事例を紹介して頂きます。そのような経験がない場合は公開情報に基づいて他社の事例を紹介して頂いても結構です。優秀事例を紹介して頂く際には、それが授業の中のどのOPMにあたるのか、また何をもって優秀と考えるか、について説明頂きます。第8章と同様に、事前に提出頂いた上で、グループワークを実施します。

第15章 ナレッジ・マネジメント
企業経営における管理領域の中で最も新しく認識された領域がナレッジ・マネジメントです。個人の持つ暗黙知を組織で共有する形式知に変換することによって、組織の創造性を高めることを目指します。本章では、その代表的な考え方であるSECIモデルについて理解することが重要なテーマです。その上で、人間はAIを含むIT技術とどう折り合いを付けて行くべきか、ということを考察します。
受講上の留意点 大学の既定のスケジュール通りに遅延なく受講してください。
第8章、第14章の事前課題の提出は出欠に拘わらず全員提出してください。
成績評価基準 ・第1章~第7章、第9章~第13章:小テスト48%
・第8章、第14章:事前課題 各章20%、計40%
・第15章:小論文12%
必読書籍 第15章の小論文を書く際に、次の書籍を読んで下さい。
・新井紀子(2018)『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』東洋経済新報社
・アンデシュ・ハンセン著、久山葉子訳(2020)『スマホ脳』新潮新書
参考書籍 第15章の小論文を書く際に、次の書籍を読むことをお勧めします。
・ユヴァル・ノア・ハラリ著、柴田裕之訳(2018)『ホモ・デウス』河出書房新社
なお、読まなくても小論文を書ける程度には、授業動画のなかで解説します。
その他 ・第8章、第14章の対面授業に出席しなくても減点はありません。
優秀な発表をしたグループなど、出席者に加点をすることはあります。
・本科目と「オペレーションズ・マネジメント(野間口)」は大学のカリキュラム上は同一科目であるため、いずれか一方しかご受講いただけません。お申込みの際はご注意ください。
対面授業
対面授業を実施します。受講申込の際は「対面授業スケジュール」にて日程をご確認ください。