シラバス参照

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講義名 25春 前期/リーダーシップ特論IV(史記にみるリーダー像) ※変更の可能性があります
基準単位数 1
科目区分 組織・人的資源(発展)
必修・選択 選択必修(経営人間学系)
配当年次 1・2年次
学修期間 学修期間1/2学期

担当教員
氏名
◎ 竹内 良雄

オフィスアワー eラーニングサイトおよびメールでの質疑応答を受け付けています。
(メールアドレスは大学院グループウェアのアドレス帳でご確認ください)
授業の概要 『史記』は約2千年以上も前の中国の歴史書である。その『史記』から、項羽と劉邦という天下を争う二人の人物を中心に、そのまわりに集まった人物も含めて、そのリーダー像を見ていきたい。約2千年前の人物たちではあるが、すぐに古さを感じさせない存在であることがわかり、現代のリーダーに通ずる多くのものを持っていることもわかる。授業では、直情型の項羽、ヤクザ的な劉邦および他の人物が戦いの中で、リーダーとしてどのようなパフォーマンスを見せるかを述べていきたい。
学修目標 様々なリーダー像を示すことによって、理想的なリーダーを考える上で、大いなる示唆を受けるはずである。そこから、受講者は自分なりのリーダー像をイメージし、それを言語化することによって少しでも具体的なものにできるようになる。加えて、人間観察の力を向上させる。
授業計画(各章)
第1回
タイトル
第1章
内容
第1節では、著者の司馬遷の簡単な説明と『史記』の構成について解説する。彼はリーダーではないが、その一生は人間を理解する上で非常に興味深いであろう。
第2節では、秦の始皇帝のリーダー像を探る。中国を統一し、絶対君主として支配するが、二代目の二世皇帝の時に、秦は瓦解する。そこに、リーダーとしての始皇帝の問題を探る。
第3節では、秦の圧政に対して、最初に反乱を起こした陳勝について、そのリーダー像を探る。そして反乱がなぜ失敗したかを探るが、それは起業をする人にとっても教訓を含んでいるはずである。
第2回
タイトル
第2章
内容
第1節では、のちに秦を滅ぼし、天下征服の争奪戦を繰り広げる二人のリーダー、項羽と劉邦の生い立ちについて述べる。あまりにも対照的な性格に、歴史の妙味を感じられるかもしれない。
第2節では、第1節に引き続き、二人のリーダーの違いを述べるとともに、項羽の叔父である項梁についても、そのリーダー性について言及する。
第3節では、叔父の項梁を失った項羽は独り立ちするが、劉邦とのリーダーとしての違いがさらに顕著になっていく。人材をいかに使いこなすか、また、いかに戦わずに勝利を得るか、リーダーの器量が問われることになる。
第3回
タイトル
第3章
内容
第1節では、劉邦と項羽に攻められて秦は滅亡するが、それには秦の内部崩壊も加わる。一見堅固と見えた組織が、内部の権力闘争と情報の一本化による脆弱性により、もろくも崩れる。秦の滅亡から組織というものが持つ問題を考える。
第2節では、秦を滅ぼした項羽と劉邦というトップリーダー同士が鴻門で会合し、項羽の天下統一が成る。力が及ばない劉邦は隠忍自重し、時機を待つ。己の力量を判断し、現実を直視する。リーダーには冷静な判断力が必要であることを学ぶ。
第3節では、項羽の論功行賞を述べる。論功行賞は、新たにできた組織にとって死命を制する重要な課題である。項羽の論功行賞では、劉邦に対する処遇が最大の問題となる。現代でも敵対する派閥に対する処遇で、自身の派閥も制約を受けることを考えれば、いかに論功行賞が重要か理解できよう。
第4回
タイトル
第4章
内容
第1節では、冷遇された劉邦の反撃を述べるが、事を起こすには「名分」が必要である。「名分」によって多くの人は動く。劉邦は果たしてどのような「名分」を得ることができたであろうか。 
第2節では、劉邦は項羽の圧倒的な戦力の前に苦戦を余儀なくされるが、それでも不屈の精神で応戦する。そこに劉邦という人物の魅力があり、リーダーたらんとする人は学ぶ必要があろう。
第3節では、劉邦が「和平協定」を破り、項羽の軍を追撃し、ついに勝利を手にする。リーダーは時に協定を踏みにじってもチャンスを逃さないことを知る必要があるようだ。
第5回
タイトル
第5章
内容
第1節では、劉邦の論功行賞を見ていくが、やはりその難しさに直面する。そこをどう乗り越えるか、リーダーが部下の働きをどのように見ているかが大きなポイントとなることを学ぶ。
第2節では、組織の草創期にリーダーの素質から起きる問題を見ていく。人は自分を認めてくれるリーダーに命をかける場合があることを知る。
第3節では、最高権力者となった劉邦の孤独と死を扱う。また、まとめとして、劉邦と項羽の、リーダーとしての違いを比較する。
第6回
タイトル
第6章
内容
第1節では、劉邦の部下として活躍する韓信が、その才能を人に認められるまでのいくつかのエピソードを紹介する。
第2節では、戦いのリーダーとして才能を開花させるが、相手の心を読んだ戦術にリーダーとしての心構えを学ぶ。
第3節では、項羽、劉邦の二大リーダーに分け入って第三のリーダーとなるが、時機を失し、命を落とす。リーダーとして上りつめるにはタイミングが必要だったこと学ぶ。
第7回
タイトル
第7章
内容
第1節では、漢の宰相となった蕭何の生き方を見ていく。蕭何は、リーダーのリーダーである劉邦の偉業を陰で支えたリーダーであり、難しい立場をそつなくこなす知恵を学ぶ。
第2節では、参謀役の張良の生き方を見ていく。その優れた献策に、いかにリーダーたちの動きを冷静に見ていたかを学ぶ。
第3節では、建国後、功労者であったリーダーたちが消されていくなかで、張良は神仙の世界に逃れ、生を全うする。張良の出処進退を例にして、間違えない生き方を探る。

追加として「陳平」を採り上げる。陳平は、反秦の兵に加わることから始まり、最後は漢王朝の安定まで、長い間に渡って活躍した。この講義を締めくくるにふさわしい人物であろう。
受講上の留意点 大学の既定のスケジュール通りに遅延なく受講してください。
成績評価基準 各章ごとに課題のレポートを提出してもらう。配点比率は70パーセント。最後にまとめのレポートを提出してもらうが、配点比率は30パーセント。各章レポートは3回以上未提出の場合は不合格。また最終レポートは必ず提出すること。未提出の場合は不合格とする。なお、評価には客観的評価を加味します。
必読書籍 なし。
参考書籍 竹内 良雄著/川崎 享著『十八史略』に学ぶリーダー哲学 東洋経済新報社 2019年
その他 特にありません。

※本シラバスは開講前に変更になる可能性があります。ご留意ください。
事前学修・発展学修 事前学修:
文庫版『司馬遷 史記』3・4・7巻 (徳間書店 2016年)を読んでおくと、秦と前漢に活躍した人物がわかる。また、守屋洋著『ビジネスに効く教養としての中国古典』 (プレジデント社 2016年)を読むことによって、中国古典の世界に馴染むことができよう。

発展学修:
守屋洋著『「史記」の人物学』(PHP文庫 1986年)、同じく『「史記」の処世学』(電子書籍)を読むと、より深く理解ができるであろう。
対面授業
対面授業は実施しません。